青森県、八戸市の眼科・松橋眼科クリニック

文字サイズ変更

トーニチコンタクトレンズ
コンタクトレンズのページへ
松橋眼科クリニック スマートフォンからもご覧いただけます

トップページ お知らせ・各種情報 「糖尿病網膜症の病態と治療」(医師向け)

お知らせ・各種情報

一覧に戻る

「糖尿病網膜症の病態と治療」(医師向け)

2013年11月25日


132回八戸糖尿病談話会

平成25108日 八戸グランドホテル

「糖尿病網膜症の病態と治療」

慶應義塾大学医学部眼科学教室 専任講師 小沢洋子

糖尿病網膜症の基本的な病態のひとつは網膜微小血管系の閉塞である。虚血に陥った網膜からは血管内皮増殖因子(VEGF)が放出され、VEGFは新生血管を発生させる。この新生血管を含む増殖膜は、硝子体出血および網膜剥離を併発し、直接的な失明原因となる。しかし近年、光凝固および硝子体手術の発達により、この増殖膜による失明は減少した。むしろ現在、糖尿病による視機能障害の主因となっているのは、網膜の中心である黄斑の浮腫(糖尿病黄斑浮腫、DME)である。

DMEは重症例(増殖網膜症)だけではなく、増殖膜をともなわない非増殖網膜症においても発生する。DMEによって完全失明に至ることはないが、中心視野が障害され視覚の質は著しく低下する。疫学調査によるとDMEは1型糖尿病で14%、2型でも6%にみられ、主要な危険因子は高血糖、罹病期間、脂質(特に高LDL)である。

 

OCToptical coherence tomography)は眼底からの光の反射を解析し眼底の3次元画像観察を可能にした画期的な診断機器である。DMEは従来、蛍光眼底造影によって定性的に診断されていたが、OCTの登場によってDMEを非侵襲的かつ定量的に評価することが可能になった。後述する薬物療法の効果判定においてもOCTは欠かすことができない。

DMEの治療は大別して1)光凝固 2)薬物療法 3)硝子体手術の3つがある。

1)ではレーザーを用いて血管透過性の亢進している毛細血管瘤を凝固する。有効ではあるが、萎縮瘢痕が拡大し視力低下をきたすことがあるため、中心窩からある程度離れていないと実施できない。2)に用いられるのはステロイド(硝子体またはテノン嚢下への注射)および抗VEGF製剤の硝子体注射である。3)は12)の後に残る最終手段である。

 

ステロイドはDMEに対して確かに有効であり、DMEの発生には炎症が関与していると推察できる。しかしステロイドには眼圧上昇と白内障という副作用があり、特に硝子体注射では高率である。抗VEGF製剤は、眼科領域では滲出性加齢黄斑変性の治療薬として登場したが、DMEに対しても著効を示す。そもそもVEGFは新生血管を誘導するだけではなく、血管透過性を亢進させる(すなわち炎症)因子でもある。手術中に採取された糖尿病網膜症の硝子体液からは、増殖膜の無いDME症例においても高い値のVEGFが検出されており、他の炎症性サイトカイン(IL6 IL8 MCP1等)も上昇している。

 

複数の抗VEGF製剤について、硝子体注射によるDMEの改善効果(視力の上昇、黄斑部網膜厚の減少)が確認されている。治験のデータはまだ短期(2年程度)のものが殆どだが、コントロール(光凝固)群よりも有効、ステロイドとの比較でもより有効と分かってきた。抗VEGF製剤の問題点は、反復投与が必要なことと、高価なことである。

 最後に細胞生物学上の研究成果を紹介するが、紙面の制約のため主要な項目を列記するにとどめる。1)網膜組織におけるRAS(レニン‐アンギオテンシン系)の存在 2DMマウス網膜におけるRAS の亢進→AngiotensinUおよびAT1 receptorの上昇 3AT1 receptor 刺激によるVEGFの誘導 4ARB投与によるDMマウス網膜の機能障害(網膜電図OP波減弱)の抑制 5)網膜神経細胞シナプスにおけるAT1 receptor刺激によるSynaptophysinの低下、シナプスの機能不全。これらのデータは、糖尿病では網膜RASが亢進し、血圧を介さず直接に神経細胞の機能不全をもたらしていることを示している。

 

 

(文責 松橋英昭)



  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

このページの先頭へ

Copyright(C)2007- MatsuhashiEyeClinic All Rights Reserved.