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見直し必至の薬価算定ルール

2016年06月22日

 414日、熊本県を中心に大地震が発生。拙文を執筆中の19日現在もなお強い余震が続き、被害の拡大が報告されております。被災された皆様に心からお見舞い申し上げますとともに、犠牲となられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。


 

 さて、わが国の医療を脅かす要因が数ある中で、最近とくに注目されているのが膨張する薬剤費の問題です。2014年、日本の概算医療費40兆円のうち約10兆円を薬剤費が占めています。2000年との対比で、医療費の増加は36%でしたが、薬剤費の増加は62%(実額3.8兆円)にも上ります。


 

 私の専門である眼科全体の医療費は約1兆円(2012年)ですが、その5%(500億円)が抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬の2剤に注ぎ込まれる事態となっています。はじめは加齢黄斑変性に対する治療薬として、しかもオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)として認可されたものの、その後、網膜静脈閉塞症および糖尿病網膜症に伴う黄斑浮腫にまで適応が広がりました。先の改定で薬価は約13%下がったとはいえ、それでも1回分で1415万円。有効期間は約2か月間ですが、大半の症例は治癒に至らず、硝子体内注射を打ち続けねばなりません。眼科の医療費が圧迫されて製薬会社に吸い上げられるという構図になっています。


 

昨年、薬価収載されたC型慢性肝炎の治療薬ソホスブビルには161,799円という薬価がつきニュースとなりました。本剤はレジパスビルとの併用で12週間経口投与されますが、その薬剤費は計545万円にも上ります。有効性と安全性の高さから、画期的新薬と評価された結果ですが、一方、その薬価の高さから医療保険への影響を懸念する声が続出しています。最近の中央社会保険医療協議会でも、本剤に関連して、日本医師会の中川俊男副会長が薬価算定ルールの抜本的な見直しを求めました。(注.本剤は4月から特例引き下げとなった)


 

 薬価算定の仕組みについてご存じの方は多くないと思います。かくいう私も今回はじめて資料を見たのですが、新医薬品の薬価は製薬会社と国(厚生労働省)との交渉によって決まります。


 

算定方式には2通りあって、ひとつは「類似薬効比較方式」。これは先に承認されている薬品の価格を参考にしつつ、優れた点があれば「画期性加算」「有用性加算」を加えるという方式ですが。さらに「外国平均価格調整」によって海外との価格乖離を避けるよう交渉が行われるため、欧米で高止まりの薬価を日本だけ独自に抑制するのは難しいようです。


 

もうひとつは「原価計算方式」ですが、類似薬のない場合に、製造(輸入)原価、販売管理費、営業利益などを勘案して価格を決める方式です。既存の治療と比較し、その革新性や有効性、安全性の程度に応じて営業利益率を−50〜+100%範囲で調整するとなっており、最近はこの類の新薬も多く、高額な薬価が設定されているようです。


 

 問題なのは現在の薬価算定ルールに「費用対効果」の評価という概念もデータも欠けていることです。これからは医療経済学の手法を導入してデータを蓄積し、生命予後だけではなくQOL(生活の質)の改善という要素を統合した指標を用いて、薬剤の費用対効果を評価する必要があります。そして、その費用が高いか安いか、どこまでを社会が負担できるか(つまり保険の適応とするか)を国の政策の中で議論しなければなりません。


 

 もちろん画期的新薬の登場は歓迎すべきですし、製薬会社がその開発コストを回収できないようでは『創薬』は不可能です。しかし米国ならば高い民間保険に加入している者しか相手にしないわけですが、日本ではそのほとんどを税金で賄おうとしているのです。「有効かつ安全な薬であるがゆえに、薬価は多くの人が使えるようにコントロールすべき」(日本薬剤師会・安倍好弘理事)ではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

『はちのへ医師会のうごき』563号巻頭言
 
 
 
 
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